三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第一話

留守番

2026.08.07

小学二年生の娘に、はじめて留守番を頼んだ日のことだ。

近所のスーパーまで、往復二十分。「誰が来ても、絶対に開けちゃだめだからね」と言い聞かせると、娘は真剣な顔でうなずいた。

買い物を済ませて玄関の鍵を開けると、娘はテレビの前に座ったまま、こちらを振り向いて言った。

「おかえりなさい」

いい子にしてたよ、誰も来なかったよ、と娘は笑う。私は安心して、買ってきたプリンを冷蔵庫にしまった。

夜、寝かしつけのとき、娘が布団の中でぽつりと言った。

「ねえ、ママ。ただいまって言わないで入ってきたの、はじめてだったね」

そうだったかな、と私は笑った。娘は笑わなかった。

「あのね、ちゃんと言ったほうがいいよ」

「どうして?」

「さっきのママは、ちゃんと『ただいま』って言ってたから」

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